透き通るようないたみとさびしさを湛えた5つの話。
しとしと降る雨みたい
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でもそれは決して心を傷めるものではなく、むしろ癒すようなものです。
ひとは、愛した人や友人や肉親、見知らぬ人の「死」を悼む。悼まずにはいられない。
でもその悼みを通して、亡き人と自らの「生」が浮き立つんだ。
「おっさんはおっさんの世界で生きるしかないやろ。おっさんだけやない。みんな同じや」
「同じ?同じなのか?みんな?」
(「眠りの海」)
「私は」
真由子は呟いた。
「祈る人になりたい」
本当に祈るように真由子は両手を組んで瞼を閉じた。
(「祈灯」)PR