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温もりの 残れるセーター たたむ夜 ひと日のいのち 双掌(もろて)に愛(いと)しむ


島秋人さんの『遺愛集』に収められている短歌です。
この短歌を詠んだとき、島秋人さんは死刑囚でした・・・。

島秋人さんは、昭和9年6月28日に生まれ、幼少を満州で育った。戦後新潟に引き揚げたが母は結核でまもなく亡くなった。本人も病弱で結核やカリエスになり7年間もギブスをはめて育ったが、小学校でも中学校でも成績は一番下だった。まわりからうとんじられるとともに性格がすさみ、転落の生活が始まった。強盗殺人未遂で少年院に、放火で刑務所に服役するなどした。
昭和34年雨の夜、飢えにたえかねて農家に押し入り2千円を奪い、争ってその家の人を殺し死刑囚として獄につながれることになった。
中学の頃の図画の時間、吉田好道先生に「絵はへたくそだけど構図がよい」と言って、たった一度だけほめられた記憶を忘れられず、獄中からその先生に手紙を出したことがきっかけとなり、秘められた“うた”の才能の扉が開かれ、身も心も清められていった。
昭和42年11月2日小菅にて処刑。
死後、歌集『遺愛集』が刊行される。

教育、殺人、死刑、人との繋がり、そして「いのち」について考えるとき、僕はいつも島秋人さんのことを想います。その生き方や言葉、短歌から計り知れないほど多くのものを受け取りました。
人を殺めた、その罪は決して消えない。しかし、ひとはそれで「終わり」じゃない。
誰よりもやさしく、あたたかく、いのちを愛しむひとになることもできるんです。


この手もて 人を殺めし 死囚われ 同じ両手に 今は花活く

過ぎてゆく ひと日を惜しみ 許されぬ いのちのなかに 愛(かな)しさを知る



これは島秋人さんが処刑前夜に詠んだ短歌です。

この澄める こころ在るとは 識(し)らず来て 刑死の明日に 迫る夜温(ぬく)し
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