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偶然巡り会った本。たまたま探していた本がなかったから、時間をつぶすために手に取った本。
でも、その巡り合わせに感謝しました。
「サイテーの、サイアクの、もう、めちゃくちゃでどーしようもない現実でも」
“親子”だからこそこんなに不器用で
“親子”だからこそこんなに切なくて
“親子”だからこそこんなにもあたたかい
物語がはじまってすぐの、こんな言葉で、もう僕は「流星ワゴン」に吸い寄せられていたんだろうと思います
今夜、死んでしまいたい。
もしもあなたがそう思っているなら、あなたが住んでいる街の、最終電車が出たあとの駅前にたたずんでみるといい。暗がりのなかに、赤ワインのような色をした古い型のオデッセイが停まっているのを見つけたら、しばらく待っていてほしい。
橋本さん親子があなたのことを気に入れば-それはどうやら健太くんに選択権があるようなのだが、車は静かに動きだして、あなたの前で停まるだろう。
助手席の窓が開く。顔を出した少年が、健太くんだ。
「遅かったね」と健太くんは言うはずだ。
ドアロックが解除される。
「早く乗ってよ。ずっと待ってたんだから」
健太くんは少し生意気な、しかし元気で明るい男の子だ。
あなたはきっとドアを開ける。自分の意志というより、なにかに吸い寄せられるようにして。
三列シートの二列目に座ってドアを閉めたら、ドライブが始まる。
行き先は尋ねないほうがいい。訊いても無駄だ。健太くんはいたずらっぽく笑うだけでなにも答えてくれないし、橋本さんは黙って、車のスピードをぐんぐん上げていく。不思議と怖い気はしない。いや、「不思議と」と感じることさえ、ない。
やがて窓の外が明るくなる。
気がつけば、あなたは懐かしい場所-あなたにとってたいせつな場所に立っている。
僕がそうだったように。